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【書評】『タタール人の砂漠』はあなたを突き動かす一冊。

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本日は最近読んで衝撃的な面白さだった本のレビュー。

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『タタール人の砂漠』ブッツァーティ著

自分の未来にはまだ無限に近い時間があると思い、無為に日々を過ごす人がいる。
それでもやはりひとつのページが終わり、人生の一部が過ぎ去ったことには違いない。
そして最も大切なことは、未来の時間は決して無限ではないということだ。

『タタール人の砂漠』は1人の青年将校が辺境の砦に赴任を銘じられたところから始まる。
辺境の砦でいつ来襲するとも分からない敵を待ちつつ、期待と落胆の中で青春を浪費する将校、ジョバンニ・ドローゴ。
「4ヶ月だけ、その後自分は町へ帰る」そう自分に言い聞かせていたドローゴは、ついに惰性に流され生涯をその砦で過ごすことになる。

「自分はまだ若い、自分の将来は無限に広がっている」

そんなドローゴの思いに関わらず、時は無常に過ぎていく。
そして彼自身も本当は気付いている。昔は無限とも思えた時間が、可能性が、少しずつ着実にすり減っていくのを。

 

ジョバンニ・ドローゴの物語は、現代とはかけ離れた時代のものだが、彼の葛藤・惰性・焦燥は現代人にも通ずるものがあると思う。
時代が異なるからこそ、いっそうその共通点がありありと映し出されるのかもしれない。

今の組織に、境遇に、環境に、運命に満足はしておらず「自分もいつかは」となんとなく夢想しているだけの人。
遥かな到達点をぼんやり眺め、そこに最短で到達するために正解の道をいつまでも模索し続けている人。
やりたいことはあるが、今さら自分には不可能だから今の環境にいるしかないと思っている人。

こうした人がこの物語を読むのは辛いことだと思う。
なぜならドローゴの人生を読み進めるにつれ、彼の考え方がいかに悲劇を生み出すかが分かるからだ。
そして、自分がいかに彼の様な考え方で人生を過ごしてきたを思い知らされるからだ。

今この瞬間こそが、あなたの「残り時間」の中で最も可能性がある瞬間だ。
1ページめくれば、1ページ分だけあなたの可能性は終わっていく。

この本は前へと向かう力を与えてくれる本だと思う。
しかしそれは「未来には大きな可能性がある」というような類のものではなく、
専らこのような否定形でもって示される、切迫感をもってあなたを突き動かす鈍い力だ。

 

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