身の回りの小物をほとんど革素材で統一しているぼく。カメラストラップから小物入れ、キーケースまで毎日使うものに革素材を選ぶと、経年変化を日々感じられるのが楽しいですよね。
ぼくはこうした使い込むことによって魅力が増す素材が昔から好きで、レザーやデニム、リネン、キャンバスなどは見つけるとついつい手で触ってしまいます。
たいていの物は買った瞬間が最も価値が高く、使うに連れて徐々に価値がなくなっていくものですが、こうした素材は逆。新品状態はあくまでスタートに過ぎず、そこから自分で使うに連れてどんどん魅力が増していきます。
経年変化という言葉がありますが、僕はもっと分かりやすく経年進化と呼んでもいいと思っています。
今回はそんな大好きな革小物のラインナップに、新しく「Prairie GINZA(プレリーギンザ)」という老舗の革製品ブランドの長財布が加わりました。それも革のダイヤモンドとも称されるコードバンを使用した逸品。
今年のはじめに財布をマネークリップに変えたのですが、思うところがあり今回再び長財布に戻ってきました。そのあたりの経緯なども含めてご紹介します。
老舗ブランド「Prairie GINZA(プレリーギンザ)」
きっかけは東京・銀座に本社を構える老舗の革製品ブランド「Prairie GINZA(プレリーギンザ)」より、タイアップのお話を頂いたこと。プレリーギンザは1957年に創業した日本のブランド。日本のタンナーが丁寧に仕上げた質の高い革素材を使い、職人によってひとつずつこだわって作られています。
今回はブランドの方から実際に製品を見に来ないかとお誘いいただき、本社の1階フロアにある直営店舗ル・プレリーに行ってきました。
そこで写真のようにサンプルをひっくり返しながら、革素材のことや職人のこと、製品のこだわりについてたっぷりお話を聞かせていただきました。
最終的に「Fukulowさんが本当に気になった物を選んで、記事を書いてください」と製品を選ばせていただけることに。いろんな製品をじっくり吟味し、選んだのが今回紹介するナチュラルコードバンの長財布でした。
プレリーギンザ「ナチュラルコードバン 長財布」
今回選ばせていただいたのはプレリーギンザの新作「コードバン ナチュラルグレージング」シリーズの長財布。希少素材であり「革のダイヤモンド」とも言われるコードバンを使った長財布です。
外箱は黒い箱に箔プリントでブランドロゴが書かれたシンプルなデザイン。
箱を開けると柔らかいファブリックに包まれた長財布が出てきます。革製品特有の香りで自然と気持ちが高まります。
布をめくると中からついに財布が登場。これまでたくさんの革製品を見てきましたが、コードバン自体は今回が初めて。それでもツヤやハリで一目見た瞬間から他の革との違いをはっきりと感じました。これがコードバンか…。
思わずため息の溢れる、圧倒的な革のクオリティ
ここからは新品状態のコードバンの質感を詳しく紹介。写真でも十分にその存在感が伝わると思います。
まず最初に驚くのはその光沢。未エイジングの状態でまばゆい光を放っています。革の表面にワックスなど仕上げ剤を塗り、それをローラーによる強摩擦によって磨きあげて光沢感を出す「グレージング」という仕上げがなされています。
今回の新作「ナチュラルグレージング」はグレージング仕上げながら、あくまで自然な光沢にこだわって作られているのが特徴。なので革の光沢もビニールのような強いものではなく、高級感のある落ち着いた表情。
美しい光沢とともに見惚れるのが革のハリ。硬く強靭なコードバンらしい質感で、そのドレッシーな見た目はまさに大人の持つ財布。ぼくはもともと硬くて男らしい革が好きなので、コードバンは昔から憧れの素材でした。
最後に注目して欲しいのが革の繊細さ。普通の革素材をぎゅっと10分の1くらいに凝縮したかのような”目”の細かさです。今まで見知った革素材とはまったく違う雰囲気で、手元に置いてあるだけでついつい眺めてしまう、そんな不思議な素材です。
希少なコードバンを長財布に、それも1枚革で惜しげも無く使った非常に贅沢な財布。
そもそもコードバン素材とは?
ここでちょっと話題を変えて、コードバンという素材についての話を。コードバン=希少素材という認識は有名ですが、どういった特徴を持つ素材でなぜ希少なのか。ぼくもコードバンを持つのが初めてなこともあり、改めて勉強してコードバン素材についてまとめてみました。
コードバン=農耕用馬の臀部の皮革
まず一般的にコードバンとは農耕用馬の臀部(おしり)から採取できる皮革のことを指します。もともと馬肉文化のあったヨーロッパ地方で飼育されていた農耕馬からのみ採ることができます。
自然体に近い状態の馬からしか採取できないので、サラブレッドなど走る目的のために育てられた品種にはそもそもコードバン層がほとんどないのだとか。
単層構造を持つコードバン
普通の革素材は「床」という素材の上から「銀面」という層がくっついた2層構造からなっています。人の肌も表皮や真皮など複数の構造から構成されていますよね。それに対してコードバンはコードバン層という「床」のみからなる単層構造をしているのです。
単層構造であるコードバンがなぜ優れているかというと、革素材に「浮き」が起きにくいという点。
素材にはそれぞれ固有の張力があります。異なる素材が1つになった2層構造は使っているにつれて、張力の違いにより素材同士の間に隙間が生じます。「浮き」と呼ばれるこの隙間ができると革が平らな状態ではなくなり、綺麗なツヤが出にくくなります。
逆にコードバンは単層構造なので、素材の違いによる「浮き」が発生しません。革が平らな状態が持続するので、使い込むと美しいハリやツヤが出てくるのです。
水に弱いので取り扱いには注意
コードバンは堅牢な牛革よりもさらに強度に優れた素材だと言われますが、完璧な素材ではなく使う上で注意点もあります。それが水への弱さ。
コードバンは水を吸収すると繊維が水分で膨らんでしまい、乾くと表面が凸凹になってしまいます。紙を水に濡らして乾かすと波打ってしまうのと同じですね。
なのでできる限り水に濡らさない、濡れたらすぐに拭き取ることが重要です。財布の場合ポケットに入れると蒸れで水分にさらされる危険性があるので、バッグにいれて持ち運ぶのが安全です。
このようにその他の革とは構造からして異なるのがコードバンという素材。特有の美しさを持つぶん弱点もあるので、取り扱いに注意が必要な素材でもあります。
デザインを極力排した、シンプルな内部構造
表革の説明だけで3,000字近くを費やしてしまいましたが、ここからは内部構造を紹介。中は牛革を使用したシンプルな作り。ステッチも革に合わせた同色のブラウンで、スッキリした見た目が良いですね。
カードポケットが全部で10枚備わっているので、収納力もなかなか。ぼくの場合だとポケットが余ってしまうほどです。上の写真を左右にスライドして、その収納力を確かめてみてください。
唯一の意匠である手前のカードポケットに刻印されたブランドロゴ。ブランドロゴが大きすぎると萎えてしまうんですが、このサイズ感が個人的に絶妙で、むしろ全体の良いアクセントになっていると思います。
そして所有欲を高める”CORDOVAN MADE IN JAPAN”の文字。別に書いていなくてもコードバンに変わりないのですが、改めて書いてくれるとなんだか嬉しい。好きだから付き合ってくれてるはずだけど、たまには面と向かって好きと言って欲しい、あの気持ちと同じです(たぶん)
小銭入れはジップ仕様で、前後にお札を入れるスペースがあります。
表裏両面ともフチは全てネン引き仕上げ
素材の良さだけに目が行きがちですが、プレリーギンザは財布自体の作りも非常に丁寧。
革のフチは全て「ネン引き」と呼ばれる工程が施されています。これは革の端から数ミリの場所にコテを当てて線を引くことで革の圧着を高め、かつ見た目を引き締める効果がある仕上げ加工。
職人の手作業によって行われるネン引きですが、実はあってもなくても財布の耐久性が変わることはほとんどありません。それでも1本1本ネンを入れるのは、製品を美しく仕上げるための作り手のこだわり。
プレリーギンザの長財布には、表裏両面の全てのフチにこのネン引きが施されています。
磨き上げられたコバの美しさ
革の切断面を「コバ」といい、このコバの処理が革製品全体の印象を大きく左右します。多くの革製品はコバが樹脂で塗られているのに対して、プレリーギンザの財布は職人が1辺ずつ丁寧に磨き上げた美しいコバの仕上がり。
プレリーギンザの方から聞いた話では、このコバを磨く”だけ”の専門の職人がいるとのこと。同じように革を裁断する職人、鞣す職人。
店頭で陳列されている状態だと分かりませんが、1つの財布ができるまでに多数の工程があり、それぞれが専門の職人の手によって作られているのです。
そんな事実を知っていつもより少しだけ大切に使おうという気になりました。
マネークリップから再び長財布を選んだ理由
最後に今回財布をマネークリップから再び長財布に変えた理由を少し。
今年の初めに財布をマネークリップに変えて、その身軽さがすごく気に入っていました。荷物はできる限りコンパクトにしたいので、もう長財布を使うことはないかなと。
財布選びはそのままライフスタイルに直結します。プレリーギンザの方もぼくがマネークリップを使っているのを知って「無理して財布にしなくても良い。本当に使いたいものを使って欲しい。」と言ってくれました。
それでも自ら長財布を選んだのは、純粋にコードバンの長財布がとても格好良かったから。一目見てコードバンの美しさに目を惹かれ、手にとって見てその丁寧な作りに魅了されました。
長財布はかさばるし、毎回バッグから取り出す手間もかかります。マネークリップに比べて手軽さや今っぽさも劣ります。
それでも自分のライフスタイルにおいて財布に求めるものは何かを考えたとき、最も大切なのは気分を高めてくれる格好良いものを持つことでした。
ジャケットの胸ポケットからスッと取り出す所作や、会計のシーンを想像したとき、より自分の考える格好良さに近いのが長財布だったのです。
使用感、エイジングを継続的に紹介します
今回プレリーギンザさんからは「単発の商品紹介だけでなく、使い込んだ様子もレポートして欲しい」と依頼を受けました。これはぼくにとっても嬉しい提案。
財布は長く使ってみて初めて分かることも多いですし、何より今回はエイジングが楽しみなコードバン素材。せっかくだったら使い込んだ革がどう変化していくかもお伝えしたいですよね。というわけで今後およそ半年に渡ってこのコードバン長財布を定期的にレビューしていきます。
「こういうところが気になっている」「これについて書いてほしい!」など要望がありましたら、ぜひFukulowのTwitterやLINE@にてメッセージいただけると幸いです!頂いた意見は今後の参考にさせていただきます。
一緒にエイジングをレポートしてくれる読者を募集
今回プレリーギンザ様のご好意により、記事でご紹介した最高級のナチュラルコードバンを用いたパスケースをプレゼント用に1つご提供いただきました。
コードバンは使い込みによる経年変化が魅力の革素材。そこで今回はFukulowと一緒にパスケースのエイジングをレポートしていただける方から抽選でプレゼントしたいと思います。
- Twitterで「#プレリープレゼント応募」と付けてツイートすれば応募完了
- 2017年12月までの間、実際に使っていただける方
- 使い込んだ様子を定期的に写真でFukulowに送っていただける方
応募条件は上記の通りです。Fukulowの記事執筆のタイミングに合わせて2017年12月までの間、使い込んだ写真をぼくまで送っていただける方が対象となります。
おそらく写真を提供いただくのは2,3回ほどの予定。コードバンのエイジングを味わいたいという方は、以下のリンクをクリックして応募ツイートをお待ちしております。一緒に楽しみましょう!(応募期限:2017年9月5日まで)