OLYMPUS PENといえば、コンパクトなサイズと使いやすさに優れたオリンパスのデジタルカメラシリーズ。CMなどで一度は目にしたり耳にしたりしたことがある人も多いはず。
また黒くてゴツゴツしたカメラの世界にあって、華奢な見た目で女性向けなカメラをイメージする人もいるかもしれません。実際OLYMPUS PENシリーズの公式サイトでは、おしゃれな女性が片手でラフにカメラを構えて撮影しているビジュアルが使われています。
でもそうしたOLYMPUS PENシリーズのコンセプトが、50年以上前のフィルムカメラ時代からすでに出来上がっていたのは知っているでしょうか?
今回は今でも続くOLYMPUS PENシリーズの礎にもなった「OLYMPUS PEN FT」というフィルムカメラをご紹介します。独創性あふれるデザインや機能は、発売から半世紀以上経った今でもとても魅力的です。
YouTubeでもこのカメラの特徴や魅力についてご紹介しています。
PEN Fの可愛い見た目と精悍な作りに惚れた
OLYMPUS PEN FTに初めて興味を持ったのは、フィルムカメラが好きな知人に見せてもらったのがきっかけ。この1つ前機種に当たるOLYMPUS PEN Fというカメラを触らせてもらえる機会がありました。
最初こそコンパクトなサイズや可憐なFの花文字がすごく可愛いカメラだなという印象でしたが、フィルムレバーを巻き上げてシャッターを切ったら驚き。カシャンとメカニカルシャッター特有の精悍な金属音のギャップにやられました。
そこからOLYMPUS PEN Fが欲しいと思い色々と調べ始めると、どうやら前機種のPEN Fの方は露出計が未搭載。勘露出に頼る自信はなかったので、露出計を内蔵した後継機種のOLYMPUS PEN FTを購入しました。
新しいフィルカメラをmngした!小さくて可愛い pic.twitter.com/DxLyhmsjHq
— 平岡 雄太 / DRESS CODE. (@yuta_black) December 28, 2019
購入したのは新宿にある「中古カメラBOX」というお店。地下にびっしりとクラシックカメラが並ぶ特異な雰囲気の店内ですが、スタッフさんも親切なのでフィルム初心者の人でも相談しながら買い物ができるお店です。
1コマを左右で分割するハーフサイズカメラ
OLYMPUS PEN FTはハーフサイズカメラと呼ばれるジャンルのフィルムカメラ。普通の35mmフィルムの1コマを左右半分(ハーフ)に分けて撮影することで、普通のフィルムの2倍の量を撮影できます。よりフィルムカメラを安く使えるメリットがあります。

こんな風に1コマに2枚の写真を撮影できる
横長の1コマを左右に半分ずつ使うので、普通のカメラのように横位置で構えると縦長の写真が撮影できるのが特徴。(スマホと同じ感覚かも)
もちろん現像後にトリミングして2枚に分割しても良いし、2枚繋がっていることを生かして組み写真のように左右でストーリーを想起させるような写真にしても面白いです。
ハーフサイズというフィルムカメラならではのフォーマットは、普段デジタルカメラで撮り慣れた人にも新鮮に感じられるはず。
ハーフサイズなのに一眼レフという独創的な作り
こうしたハーフサイズカメラはOLYMPUS PEN FT以外にもいろんなメーカーから作られています。RICOHのオートハーフもハーフサイズカメラとしては有名な機種。(これも格好良くて好き)
リコーオートハーフが格好良過ぎるから見て
夜の街が似合う男だな pic.twitter.com/LKEAYVs8pJ
— 平岡 雄太 / DRESS CODE. (@yuta_black) November 16, 2018
ただ数あるハーフサイズカメラの中でも、OLYMPUS PEN FTはハーフサイズなのに一眼レフという珍しい作りになっています。

ミラーが横方向に取り付けられた、独特な一眼レフの構造
通常ハーフサイズのフィルムカメラは素通しのガラスファインダー(写ルンですののぞき窓と同じ)のものがほとんどですが、OLYMPUS PEN FTは一眼レフというレンズから入った光をファインダーで見るという構造です。
カジュアルに使えるハーフサイズカメラなのに、ファインダーを覗いて本格的な撮影ができるというのがユニークで独創的な点です。
フィルムカメラOLYMPUS PEN FTで撮影した作例
ここからはOLYMPUS PEN FTで撮影した写真をいくつかご紹介。デフォルト位置が縦構図なので自然と縦構図が多くなります。
通常の35mmフィルムの半分の大きさということで、データ化して引き伸ばすと多少粗さは感じますが、むしろフィルム特有の曖昧さや柔らかさがでて個人的には好み。
レンズはいわゆるオールドレンズの部類なので、逆光耐性の弱さを利用してフレアやゴーストを入れ込んだ撮影も楽しいです。
露出計も難しいF値などをあえて使わず、ファインダー内に表示された数字とレンズの絞り環の数字を合わせるだけという仕組みで、難しい概念をうまく単純化して使いやすさに配慮しています。
ポケットに一眼レフを忍ばせる
およそ一眼レフらしからぬエレガントな見た目、ハーフサイズという気軽に撮れる仕様、雰囲気のある描写。そしてOLYMPUS PEN FTはもう一つの特徴があります。それはこのカメラがコートのポケットくらいならすっぽり収まってしまうポケッタブルなカメラであるということ。
”精巧に作られた機械をポケットに忍ばせて街を切り取る”
現代のOLYMPUS PENシリーズにも通ずるこうしたカメラとの向かい方は、半世紀も前にすでに確立されていたのです。
OLYMPUS PEN FT、とても良いカメラです。