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#私がフィルムカメラを使う理由 | Vol.6 内田さん

スマートフォンに付いているカメラを含めれば、今や誰もが一台は持っているカメラ。写真を撮るという行為は昔よりもずっと身近になりました。

そんなデジタルカメラが主流なこの時代にあって、今でもフィルムで写真を撮ることを楽しむ人がいます。

家電量販店では売っていないし、フィルム1本ごとに現像が必要。1枚撮るのにもお金が掛かる。そんな一見不便なフィルムカメラを好んで使う人は、自分なりのこだわりや理由があるはず。

#私がフィルムカメラを使う理由」は、今の時代にあえてフィルムカメラを使って写真を撮る人に、フィルムカメラの魅力を語ってもらう連載企画。「フィルムカメラに少し興味がある」という人が、一歩踏み出すきっかけとなる連載にできれば。

第6回はフリーランスで雑誌など紙媒体の編集者をしながら、自身でも独立系の雑誌『LOCKET』を出版する内田さんにお話を伺いました。

こちらが内田さん手掛ける雑誌『LOCKET』。現在は第3号まで出版されていて、全国64店舗の書店やBASEでも販売しています。

かなり凝った雑誌で、出版社から発売されているものと比べても遜色ありません。

編集・執筆・営業まで全て内田さんが担当。そしてこの『LOCKET』の雑誌で使われている写真はほぼすべてフィルムカメラで撮影したそうです。

なぜ撮り直しができないフィルムカメラで雑誌の撮影を行うのか。内田さんのフィルムへのこだわりを聞いてきました。

※このインタビュー記事の写真は全てフィルムカメラで撮影しています。

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使っているカメラを教えてください

PLAUBEL makina W67(プラウベル・マキナ)という中判のフィルムカメラを使っています。2年くらい前に銀座カメラ市場で購入しました。

このカメラを選んだのはレンズ固定式で交換できない仕様だったから。ぼくは見たことない景色を見れる旅が好きなんですが、ズームでとった写真は綺麗ではあっても自分の目で見た景色とは違いますよね。だったらいっそのこと単焦点のレンズ固定式、かつ目に近いレンズのカメラを使いたいなと。

あと、レンズ交換ができるといわゆる“レンズ沼”が怖いので、固定式を選んでいるという側面もあります。笑

あとは中判カメラをアイレベルで使いたかったといのも理由です。

 

今使っているカメラの気に入っている点はどこですか?

Makina W67で撮った写真はフィルム独特の柔らかさはありつつも、中判ならではのシャープさが同居している点が好きですね。あとは6×7サイズっていう微妙な不均衡さもなんだか惹かれるんです。

撮影:内田さん

またW67は35mm判換算で28mmという広角が特徴。人間の目の比率に近く、見たままの絵が撮影できて写真に臨場感が生まれるところも気に入っています。

雑誌には風景とポートレートのどちらも必要。28mmはダイナミックな風景も撮影できて、人を撮影するときもスナップ的に違和感を与えずに撮影ができるんです。

 

雑誌『LOCKET』について教えてください

『LOCKET』は独立系の旅雑誌です。「主観的な事実、姿なき価値観」を雑誌全体のテーマとしています。

毎号特集を設定していて、第3号は「朝日の光源」と銘打ってインド、オランダ、ベトナム、奄美大島、奈良など様々な場所の朝日を取材しました。

現在は第3号まで発売されています

もともと雑誌社の編集者として働いていたのですが、商業誌ではできないことをやろうと思って始めたのが『LOCKET』です。

4年前に創刊し、この第3号は実に3年ぶりの新刊です。1年間隔で発刊していくつもりが、なかなか取材の時間が取れないこともあり3年も空いてしまいました…!

 

どうして『LOCKET』ではフィルム写真を使っているんですか?

やはり「本業ではできないことをやりたい」という理由が大きいですね。

ぼくは高校生くらいからずっとフィルムカメラを使ってて、フィルムの柔らかい写りがすごく好きなんです。

でも商業誌ではどうしてもコストや管理の問題でフィルム写真は使いにくくて。だから自分の雑誌はできる限りフィルム写真を使いたかった。

第3号は使っている写真の8〜9割くらいはフィルムで撮影しています。

 

フィルム写真を雑誌に使っていて、困った経験などを教えてください

まず海外取材が多いので、手荷物検査での交渉が一番大変ですね。

フィルムはX線にさらされると写りが変質してしまう可能性があるので、毎回ハンドチェック(X線に通さず保安官が手でチェックする方式)をお願いしています。

快く応じてくれる人もいれば、すごく高圧的な態度の保安官に断られることもあって…。毎回その交渉に骨が折れますね。

あとは創刊号で「幸せ」という特集を組んで、ブータンに取材に行ったんですけど、行く途中でどうやらカメラが壊れてしまったようで。

帰国して現像に出すと全くなにも写ってなかった時は背筋が凍りました…。結局ブータンは写真をイラストに差し替えて乗り切りました。

 

好きなフィルム、現像所を教えてください

フィルムはKodak PORTRA 400をよく使います。取材で使う時はどうしても汎用性を考えてISO 400くらいが必要になります。

現像所は山口の山本写真機店や、自由が丘のポパイカメラをよく利用します。やっぱり専門店は仕上がりが違います。

 

フィルムを始めようか迷ってる人に、一言メッセージをお願いします。

デジカメもスマホも、紙に印刷して耐えられるだけの画質ってもう十分あるんですね。なので編集者的にはデジカメとスマホは延長線上にあるものだと思っています。

みんなスマホは持っているんだから、だったら全く撮影体験の違うフィルムを始めてみても良いんじゃないかと思っています。

撮影:内田さん

あと、ぼくは海外によく行くのですが、デジタルカメラを使っているときはカメラのモニターばっかり見てたんですね。

でもフィルムカメラなら撮った写真の確認なんてないので、その場の目の前の景色に没頭できるんです。そして結果的にその方が良い写真を撮れている、なんてことも自分の中ではよくあります。

フィルムカメラは失敗もするけど、それと同じ分だけ意外な成功があるんです。

 

最後に、フィルムカメラで撮影したお気に入りの写真を見せてください。

撮影:内田さん

これはベトナムのメオバックという町の日曜市を撮影したものです。こうした風景やその場の空気を余すことなく撮影できるのが、広角カメラならではだと思います。

撮影:内田さん

背景の建物を構図に入れつつ、市井の人々も一緒に写せるこの写真も広角レンズならでは。

撮影:内田さん

撮影:内田さん

この2枚はベトナムのハザン省にて撮影。カメラと普段接点がない人や、子供や途上国の人々には大きな望遠レンズは威圧感を与えてしまいがち。

いつもの暮らしの中の自然な表情を引き出しやすいのも、ぼくがW67を好んで使う理由です。

 

編集後記:「良いものを作る」そんな静かな情熱

「中身を見てくれたら、きっと納得してもらえる自信がある」

最後は『LOCKET』の宣伝をどうぞ、と内田さんにお願いしたところ一言返ってきたのがこの言葉でした。

かなりのクオリティの雑誌ですが、聞くとほとんど利益的なものは出ていないそう。

クラウドファンディングで出資を募ってはどうかとぼくが提案したのですが、本人は「作ったものを判断して、それにお金を払ってもらいたい」という想いが強いとのこと。

「『LOCKET』では装丁や主観的文章、フィルムの優しい写真など、どこにも似てない読書体験を提供しています。だからやっぱり物を見てから判断して欲しいんです。」

創刊号の発売時には青春18切符で全国の書店に自ら足を運び、直接話をして64の書店を開拓。

物腰柔らかな内田さんですが、その内には良いものを作りたいという秘めたる情熱を感じました。

お話を伺った人:内田さん

Twitter: @UCCHEE1213 (https://twitter.com/UCCHEE1213

LOCKET:https://locketmag.com/

『LOCKET』に込めた意味

そうそう、取材の最後に気になっていたことを内田さんに尋ねてみました。雑誌名『LOCKET』の由来です。宇宙船のロケットなら一文字目の綴りは“R”のはず。

内田さんからはこんな答えが返ってきました。

「LOCKETはロケットペンダント(2つに開いて中に写真などを入れられるペンダントのこと)のスペルから取っているんです。」

「一瞬の感情や目に見えない思い出を閉じ込める。そうしたごく私的なものを掘り下げていくと、その先には人がロケットペンダントを見るときのように普遍的な感情になっていくんじゃないかなと。そう思ってこの名前を付けました。」

vol.5は下記のリンクから読めます。

 

あなたがフィルムカメラを使う理由も教えてください

この記事を読んで面白いなと思っていただけたら、ぜひあなたがフィルムカメラを使う理由も教えてください。

Twitterで「#私がフィルムカメラを使う理由」というハッシュタグをつけて投稿していただければ嬉しいです。お話を聞いてみたいと思う方には、インタビューのお願いをさせていただくかも。

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