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デジタルカメラ全盛の時代に、フィルムで写真を撮るぼくなりの意味。

唐突ですがまずは昔話をさせてください。あれは12年前3月、中学の卒業式の日でした。

予定通り執り行われることを良しとする式では、得てして予想外のことが起きるもの。卒業式や入学式などに特別な思い出がある人も少なくないのでは。ちょうどその日もぼくにとっては忘れられない日になりました。

卒業式が終わって友人と歓談する中に、ぼくが2年の時に少しだけ付き合っていた女の子が歩み寄ってきました。

別れて以来ほとんど目も合わせることもなかった彼女。

このままの状態で卒業を迎えて別の進路に進むのは二人の間に永遠に近い隔たりを作ることになる、とお互いどこかで感じていたのかもしれません。

「元気?」「元気元気。そっちは?」「うん、まぁ…」

何か特別な用があるわけでもなくポツリポツリと話をするものの、別れて以来1年以上ろくに口を聞いていない彼女との距離を詰めるだけの話題はない。しかしだからといってこれまでの二人の歴史をなかったことにしてうわべだけの卒業談義に花を咲かせるほどの軽薄さも持ち合わせていない。

まもなく迷い込んだ会話の袋小路を前に、ぼくの口からついて出たのは「そうや、写真撮ろう」という一言でした。

その瞬間、急に彼女の表情が崩れ、気づけばその場で嗚咽しはじめました。

慌てて訳を聞くと「もう、話されへんかと思って…」と声にならない声で言う彼女の言葉。ドラマだったらそのまま彼女を抱きかかえていたかもしれませんが、これはドラマではないし当時ぼくはただの中学生。

彼女に掛ける言葉に詰まった末にやっと言えたのはやっぱり「写真、撮ろうや」という一言だけでした。今考えても国語の読解問題なら2点みたいな回答。

・ ・ ・
 

12年も前の日のワンシーンをここまで克明に覚えているのは、そのとき写ルンですで撮った写真がいまでもぼくの家にあるから。涙で顔がくちゃくちゃになった彼女と、遣る瀬ない表情で笑うぼくが写った写真が。

これがぼくの写真に対する想いの原体験。

ありきたりな理由かもしれないけれど、ぼくが写真を撮るのはその1枚の写真が記憶の媒介となって、その当時の感情を呼び起こしてくれるから。

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いつの間にか上手く撮ることを求めすぎていた

でも今はどうだろうか。好きなカメラを使って毎日写真は撮ってはいるけど、知らずに自分の写真を評価している自分がいることに気がつきます。

上手く撮りたいという気持ちが先行して、いつの間にか撮ったそばからモニタで「これは凡庸だな」といって削除。または同じようなカットをとにかくたくさん撮って後から1枚を選定する。

きれいな写真を撮りたいという気持ちはもちろんぼくもありますし、こうした撮影方法を否定するつもりは毛頭ないです。でも、そもそもぼくが写真を好きだった理由は写真の巧拙だけではなかったはず。

どんなにくだらない写真でも、シャッターを切りたいと思ったということは自分の琴線の閾値に達した瞬間が目の前にあった証拠。その事実をなかったことにしたくはない。

ピントもブレていて髪の毛もボサボサ、泣きはらした顔と居心地の悪そうな笑顔の2人が写った中学のあの写真を、12年前のぼくは「凡庸だな」といって消したりしなかった。けれど、あれから12年経った今のぼくだったらどうだろうか。

 

フィルムカメラを使い始めました

そんな風に考えた末になんとなく「フィルムカメラで撮ってみたいな」と思うようになりました。

特段フィルムを神格化する気はないですが、今までたまに写ルンですを使っていた経験から写真1枚にゆっくり向き合って撮ったり、より思い出として写真に自分の感情が乗りやすいのがフィルムだったなぁと。

そんなことを思っていた矢先、友人のクリハラさん(@kurit3)が「余ってるフィルムカメラ、あげるよ」とカメラを譲り受けることになりました。クリハラさん本当にありがとうございます!

譲ってもらったのはPENTAX A3 DATEという1985年に発売されたプラカメラ。オートフォーカスは使えませんが、レンズ側で絞りを決めると自動で適正シャッタースピードを設定してくれる絞り優先AEが使えます。

機能的にも割と使いやすいカメラですが、中古では5,000円くらいで購入できます。

レンズはSMC PENTAX FA 28-70mm F4 ALという標準ズームレンズ。とりあえず業務用のISO400フィルムを入れて、勝手が分からないまま1本撮って現像してみました。

 

PENTAX A3 DATEで撮影した写真

現像から帰ってきた写真を見て感じたのは「思った以上に鮮明に写っている」ということと、「てざわり感のある優しい描写」だということ。

晴天下での撮影だと特に被写体のディテールまで繊細に、そして色合いも鮮やかな発色になります。これまでフィルムといったら写ルンですしか使ったことがなかったので、この違いは驚きました。フィルムカメラ、めちゃめちゃよく写る。

PENTAX A3 DATEはファインダーも見やすく、昔SONYのα7を使っていた頃はずっとオールドレンズを使っていたこともあり、マニュアルフォーカスもすぐに慣れました。

そしてなによりフィルムで撮影した写真はその独特の描写が魅力。デジタルと比べてよりてざわり感があるというか、写りすぎない点が良いなと感じます。

人間の頭の中にある思い出というのはすごく抽象的で曖昧なもの。フィルム写真の写りすぎない性質がその曖昧さと共鳴し、思い出として心に訴えてくる力があるのかなと感じました。

言葉にするのは難しいけれど、一度自分で撮影してみるとなんとなくこの感覚を分かってもらえるかも。

ピントを外しても気にしない

被写体ブレしても気にしない

感覚的な部分以外にも、冒頭で触れた通り写真としての完成度に神経質にならない(なれない)のも良いところ。

ピントを外していても被写体がブレてても、その場では確認しようがないのですぐにその写真が失敗だと断定して消してしまうことがなくなります。

そして少し時間が経って現像から帰ってきて見てみると、いわゆる失敗写真でもそれはそれで思い出として良いものだったりするのです。

深く考えずにその瞬間にいいなと思った光景を思い出として写真に収める。そういう写真との付き合い方がぼくなりのフィルムカメラの良さかなと思いました。

 

これからもフィルムでたくさん撮りたい

今この瞬間の日常を何十年後の自分への思い出にするため。これがデジタル全盛時代にあえてフィルムで写真を撮る自分なりの理由です。

もっとも、フィルムで写真を撮りたいなと思った理由はそれ以外にも単純に撮っていて楽しいというのもあります。

1本撮り終わるまで結果が見れないワクワク感、1枚に向き合う時間、触っていて楽しい操作感、そして上がってくる独特で素敵な画。お金もかかるし面倒なことも多いフィルムカメラですが、フィルムでしか体験できない楽しさというのも使ってみて感じました。

今も早速2本目のフィルムを現像に出しているので、また良い写真が撮れればブログで紹介しますね。

 

フィルムカメラの魅力について

その後ますますフィルムカメラにハマり、いまではデジタルよりも撮影頻度が多くなるほどに。そこで改めてフィルムカメラの魅力について記事にまとめてみました。

ぜひこちらの記事も合わせて読んでみてください。

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